1・488~530 テティスの請願
490:反復過去powleomai「(習慣的に)行く」などの動詞を使うことにより、アキレウスが会議や戦場に行かない日々が、アガメムノーンと口論した日より続いていることを表している。ゼウスがオリュンポスに戻ってくる日が次の段落でやって来る。
498:テティスがオリュンポスの頂にやって来た時、ゼウスは他の神々から離れたところに一人でいた。これは都合よくテティスが目的を遂げるというストーリー運びのための設定であるとともに、Kirk(Cambridge Univ)の注釈ではゼウスの座っていたオリュンポスの頂は彼の聖域であり、他の神々と一線を画して優位を示しているという。
500:テティスはゼウスの前にひざまずき、左手で膝を掴み、右手で顎を掴んだ。これは懇願者のポーズである。
514:頷きによる返答の仕方にも決まりがある。承諾・肯定は下方へのうなづき、また、否定は上方への頷きによって示す。(現代のギリシアでも普及してるとか)。neuow頭を俯ける=kataneuow(下に)うなずく(請け負う)、≠apoeipon首を後ろにする(拒絶・拒否する)
515:返答を渋り無言となってしまったゼウスに、テティスは自分を蔑んでいるのかどうかはっきり答えるよう迫る。テティスとしても愛する息子の名誉がかかっているのだから懸命である。ゼウスとしてはテティスの望みを退けるつもりはないが、それがアカイア軍に肩入れしている妻ヘーレーの怒りをかうものであることが悩みなのだ。恐れるものの何もないはずのゼウスが、妻にだけは手こずっているらしいところが、人間くさいギリシアの神の親しみを覚える面である。今でもギリシアでは恐妻家が多いと聞く。
528:ゼウスがテティスに約束の証として頷いてみせると、オリュンポス山が大きく揺すぶられた。ゼウスが雷雲の神であることを示す表現である。
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