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3・76~120 一騎打ちの申し入れ

78:ヘクトールは、手にした槍を両手で水平に持って、トロイア軍の戦列を引き止めている。(WillcockおよびWalter Leafのコメンタリーによる)

95:単数与格siwpee「静寂」は与格で副詞句となる。ここでもそうだがよく副詞akeenとともに使用される。

103:ここで犠牲は、ゲーとヘーリオスとゼウスへの三頭用意されることになった。Willcockや Thomas D. Seymourの注釈によると、黒色は大地・冥界の色で白色は太陽・オリュンポス山の色、また雌は男神に捧げられ、雄は女神に捧げられたとある。さらに Allen Rogers Bennerの注釈に、地元であるトロイア軍は大地と太陽に、よそ者であるアカイア軍はゼウスに捧げるとある。

105: axete de Priamoio bieen(プリアモスの力を連れて来て下さい)とは、「プリアモスを連れて来て下さい」の回りくどい言い方。(Willcockの注釈による)

109:いずれの注釈もここのoisはイレギュラーな用途としている。「それ(若者の思慮)に老人が介入すると」oisに掛けられた名詞は前行のfrenes(思慮)である。何にしろ若者(例えばパリス)より老人(例えばプリアモス)の方が良いということである。

113:この行にあるhippousは馬だけでなく戦車も含まれている。この時代はまだ乗馬の技術は無く、馬は馬車や戦車を引くためだけに使われていたので、この戦場で馬といえば戦車ぐるみを指した。副詞ekはその戦車から人々が離れて降りた様子を表現している。(Kirkの注釈書(Cambridge Univ)による)

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3・15~75 ヘクトールに叱咤されるパリスの決断

16:ここでようやくこの戦の元凶パリスことアレクサンドロスの名前が登場する。パリスはこの段階ではまだ鎧を着ていない。弓の腕で有名な彼だが、このイーリアスでは通常、豹皮をまとった姿は戦闘用ではない。また弓、剣、二本の槍と、様々な武器を持っているが、この点もKirkの注釈(Cambridge Univ)など、弓と槍とを同時に所持する矛盾を指摘している。

35:この行のmin(彼を)は、pareias(頬を)と同格関係にあると Thomas D. Seymourのコメンタリーにある。彼=(彼の)頬、「蒼白さが彼(彼の頬)を捕らえた」でいいだろう。

58:パリスは一時、恐怖に捕らわれるが、長兄ヘクトールから厳しい叱咤激励を受け、メネラーオスとの一騎打ちに望む決心を固める。イーリアスに登場する人間たちは、常にこのように心を迷わせる。不安定な心を克服し、理想とする本質を取り戻すことが、特に王侯の身分の者には重要である。これについては、高津春繁著「ホメーロスの英雄叙事詩(岩波新書)」九・英雄の世界に詳しく書かれているが、どんなに血迷ったとしても最終的に改めさえすれば、その人の名誉は損なわれない。迷いは神が人間に与えたものであり、それについて人間に責任はないと考えられていたとある。

59:6書333行目に同じ。kataとhyuperは相反する意味を持つ。kata aisan「運命に従って」つまり「正当な」。hyuper aisan「運命を超えて」つまり「不当な」。

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